銀の蛹

あるところに
売れないシンガーがいました
彼は毎日小さなバーで歌っていましたが
誰も耳を傾けようとはしませんでした


男は
いつもこう考えていました
自分の歌で人を感動させられたらどんなに素晴らしいだろう


ある日
男が仕事から家路に着く途中の十字路で
彼に悪魔が囁きかけました
お前の魂と引き換えに人々を魅了する歌声をやろう
彼はそれに応じました


次の日
男がいつものように小さなバーで歌い始めると
客はみんな彼の歌に釘付けになり
誰もがその歌声に心を奪われました


こうして
彼はどんどん有名になりました
しかし彼はふと考えました
俺は何のために歌ってるんだろう？
人に訴えたいことなど特にはない
日々の生活に不満もない
今では歌うことが楽しいと感じることもなくなってしまった
俺は何のために歌ってるんだろう？
俺の歌は空っぽだ
空っぽの歌に人々は感動している


彼は
その矛盾を抱えながらも歌い続けました
それしか生きる糧がないから


彼が
27歳になったある日
彼は女の奪い合いでもめて
激昂した相手に銃で撃たれ
短い生涯を終えました



ごちそうさま